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無言館をたずねて  その2

「無言館をたずねて その1」から

ずいぶんあいてしまいました。


無言館について書くのに、画集が手元にほしいと思い

作品たちを見ていたら、だんだん書けなくなってきてしまいました。


また、その絵の一枚一枚が秘めているいのちのことを思うと

そのなかの作品を画像にして掲載することも

なかなかできない気持ちになりました。


けして、感傷的な気持ちで言っているのではなく

その絵の存在に圧倒される気持ちになるのです。


img124  300


あるご夫人は、五十年ものあいだ、なきご主人が描いた

ご自分の肖像とともに暮らしてきました。

その絵は、ベッドの横に飾られ

朝目覚めたとき、夜眠るとき、一日のうちに何度も

見つめ合い語りあってきた

ご主人そのものと言ってもいい存在でした。

その絵を無言館におさめるには

その絵と別れなければなりません。

迷ったすえに、夫人はお子さんたちとともにお別れ会を開き

その絵を預けますが、絵をはずした後の壁には

くっきりと白い跡がのこりました。

それは、その絵がご婦人とともに暮らした時間を物語っていました。


img129 300


ある人は、その絵がご両親そのものでした。

その一枚の絵に描かれている若い裸婦は

その方を生むとすぐになくなったお母さんでした。

そして、その絵を描いた男性は

あたらしいいのちを宿した妻をのこして戦地に赴いたまま

帰ることのなかった、その方のお父さんでした。

その一枚の絵のなかに、ご両親のすべてがこめられているのです。


img130  300


ある画学生は、せめてこの絵具を使い切ってから出征したいと

見送りの人たちが日の丸の小旗を振って外で待つなか

あと少し、あと少し、と描きつづけたそうです。



DSC01614 400
第二展示館 「傷ついた画布のドーム」



そんな無言館の、簡素な木の扉を開けて

最初にGON企画の目に飛び込んできたのは

庭園のようなところで絵を描いている学生さんを

描いた作品でした。


木々の緑が茂るなかにひとすじ伸びる、土の細い道の途中で

スケッチブックをひろげ、しゃがんで絵を描いている学生さん。

薔薇の花の茂みの横に、寄り添うように腰をかがめているのは

今をさかりにうつくしく咲いている薔薇を

懸命に描きうつしてしておられるのかもしれません。

日高安典さんという方の

「風景」(写生する友)という油彩の作品でした。


GON企画は、しばらくこの絵に見入ってしまいました。

なぜなら、この絵のなかの学生さんの姿が

ここに展示されている作品を描かれた学生さんすべてに重なったからです。

また、ひとりの画学生さんが

「絵を描いている友人」のその瞬間を描きとどめたということも

この美術館のおもいを代弁しているように思えたからです。



家族との語らい

愛する恋人とのひととき

月夜の田んぼのあおじろい影

夏の海辺の村をつつむ光

自分をいつくしんでくれた祖母の面影


無言館の絵の画面に描かれているのは

そんな、なんでもない平穏な日々の暮らしのひとこまでした。


けれども、それらがなんと、とうといものであるのか

戦地に赴く画学生たちには、はっきりとわかっていたのでしょう。

そのことを、この画学生たちと同窓の画家、野見山暁治さんは

こう書いておられます。


「日々まみえる家族のひとりひとり、信じあえる友人、

あるいは離れがたいひと、なにげないあたりの景色。

それらが急に、貴重なものとして浮かびあがる。

そうした、かけがえのない日常を絵具や粘土で確かめるのは今しかない。」

画集「無言館」収録“還らぬ友人たち”より




DSC01605  380
(8月14日~16日は、無言館出口で、画学生たちに捧げる絵筆を渡してくださいます)



絵を描くことは、自分をとりまく世界や人々への愛なのだと感じます。

それはまた、今は戦争という状況にないわたしたちにとっても

多くのことを教えてくれます。

平和だと思っていた日々に

思いもかけないことが起こることは

それが戦争という、一国の住人すべてを巻きこむことではないにしろ

日々簡単に起こりうることを

先の大震災においても多くの方が経験されたことと思います。


ここにある絵たちは、作品なのか遺品なのか

という問いかけもあるようですが

見ているうちに絵のなかに引き入れてくれるその力は

いつしかその来歴を超えて

困難な状況を生きる人々への

力強いメッセージを送ってくれていると思います。


かなしみや苦しみのなかで制作されながら

明るい光を放つこれらの作品は

暗くきびしい状況下にあっても

自分の愛するものをたいせつにし

うつくしいと思うものを信じて

希望を失わなかった

それを描いた人のたましいの輝きであり

その光は今もわたしたちの心に届き

こうこうと照らしてくれているのだ

と感じました。



(つづく)



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  1. 2012/08/21(火) 17:59:09|
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